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お盆盂蘭盆会(うらぼんえ)

お盆

お盆

ほうづき

花

お盆

お盆は、7月15日を中心に祖先の霊を迎えて供養する行事です。陰暦の7月15日で お盆を迎える(旧盆)地域と、明治6年新暦(グレゴリオ暦)に切り替えられた際に7月17日頃にお盆を迎えるとした地域、また8月15日にお盆を迎えるとした地域と、大きく3つに分かれます。
 発祥は、日本古来の先祖供養と仏教行事の「盂蘭盆会」(うらぼんえ)が融合して生まれたと考えられています。「盂蘭盆会」とは釈迦の弟子のひとりが、亡き母親が地獄で苦しむのを見て、母親を成仏されるため釈迦の教えに従い、7月15日に僧に飲食物を施し供養したという仏事のことです。サンスクリット語で「大変な苦痛」の意味を持ち、ご先祖様をその苦しみから救って成仏してもらうための供養としてこの行事が広まりました。
 日本では、推古天皇14年(606年)に法興寺で催されたのが最初の盂蘭盆会と言われているようです。奈良・平安時代には公事となり、8世紀頃には夏の祖先供養として風習が定着しました。

迎え火と送り火
 迎え火は13日の迎え盆の夕方に、祖先が迷わず家に来れるように、麻の茎や乾燥させたおがらなどを燃やし、家の門の前で焚く火のことです。また、16日の送り盆には祖先の霊を帰すために火を焚きます。或いは、お供え物と一緒に川や海に灯篭を流すところもあります。

精霊棚
 地域によっても異なりますが、通常は家の中に祖先の霊を迎える精霊棚を設け、ここに花や野菜、団子や灯明などを置きます。最近では仏壇の前に小机を置いたり、仏壇の中に祀ったりすることが一般的になってきました。関東では精霊棚、盆棚、関西では魂棚(たまだな)などと呼ばれます。

お盆のお供え
 先祖の霊が馬に乗って早く家に来れるように、キュウリに箸を挿して馬に見立て、また牛に乗ってゆっくり帰ってもらうように、ナスに箸を挿して牛に見立てて、玄関や門に置きます。ホオズキを飾るのは灯りに見立てて、暗い中を帰っていただくのに道に迷わないようにということです。
 お盆に飾られる花は「盆花」と呼ばれますが、ご先祖様が座る場所と考えられており、お盆を迎えるものとして欠かせません。お盆の発祥のときから、その時期に野山に美しく咲いている花を採って手向けたので、元来お盆に使われる花は地域によって様々です。花生産が盛んになった今は、次のような花をお勧めします。

お盆にお勧めの花

ホオズキ
 ホオズキは漢字で「鬼灯」、または「酸漿」と書きます。ご先祖様の提灯としてはお盆には欠かせないアイテムです。また『源氏物語』では、登場する姫君である玉蔓(たまかずら)の美しく豊かな頬の喩えとしてホオズキが引用されています。

ハス
 仏教では「蓮華(レンゲ)」と称され、極楽浄土を象徴する花でもハスは、仏教と神道の融合文化であるお盆でも開花期が合うこともあり、使われるようになりました。東京都中央卸売市場では、毎年7月第1週にハス市を開催しています。

ミソハギ 
 こちらも盆花としては欠かせません。地域によりミソハギの花穂に水を含ませて、供え物に水をかける風習があり、それが禊(みそぎ)を連想させるところからミソギハギと呼ばれ、いずれミソハギになったと言われます。この花を飾ることで汚れを祓います。

オミナエシ
 漢字では「女郎花」と書きますが、「おみな」は「女」、「えし」は古語のへし「へし(圧)」で、女性を圧倒するほどのオミナエシの美しさから、その名が付けられました。

リヤトリス
 北米原産、昭和初期に日本に渡来したキク科の植物です。まっすぐなラインが特徴的です。

リンドウ
 季節の花として昔からお盆の時期にちょうど野山に咲いていたこと、また、花言葉が「悲しんでいるあなたを愛する」というところから、お盆の花として使われます。

スターチス
 お釈迦様の座禅の足を意味しているとして、お供えには紫色を使うようになったという話もあります。スターチスの紫は発色も良く、お盆の暑い季節にも花持ちが良いことから、お供えの花にお勧めです。

~マメ知識~ 「お盆はなぜ7月と8月があるのか~」

お盆を7月に迎える地域と8月に迎える地域があるのは存知の方も多いと思います。では、この違いはどのような理由から生まれてきたのでしょうか。
 現在、私たちが使う暦はご存知の通り「新暦」です。新暦とは、つまり太陽暦のことで、太陽が地球を1周する日数(365日)を1年としています。明治5年(1872年)に採用されました。
 それまでに使っていた暦を「旧暦」といい、太陽暦と太陰太陽暦を指します。日本の伝統的な行事は主に旧暦に基づいて作られました。
 太陰とは「月」を指します。太陽暦は地球が太陽の周りを1周する周期を基に作られているのに対し、太陰暦は月の満ち欠けを基準に作られました。月は29日で地球を一周するので、29日、或いは30日で1カ月としていましたが、それでは12カ月で354日にしかならず、暦と季節がずれてしまいます。  
 太陰暦は現在、アラブ諸国などで使われていますが、これらの熱帯地域では、季節の移り変わりがあまりないので、問題がないのでしょう。しかし、日本は季節ごとの特徴がはっきりしているので、暦が表す日が実際の季節と1カ月もずれてしまうこともあり、支障をきたしてしまいます。この不便さを解消するために、中国から太陰暦と太陽暦を組み合わせた太陰太陽暦を取り入れました。(604年)
 それ以降、太陽暦を採用するまでに日本の暦が10回も変わったことを聞いて驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。
 明治5年太陽暦が採用されたことで、月日と季節感のずれはなくなりました。しかし、日本の多くの年中行事は既に旧暦を基に作られていましたので、新暦では季節が合わないものがありました。ひなまつりはその最たる例と言えるでしょう。現在の暦の3月3日では、自然のモモはまだ咲いていません。  
 お盆もその例の一つです。7月15日という日付に意味のある行事ですが、新暦の7月15日は農繁期の真っ最中です。国民の大半を占めていた農民にとって、この7月15日にお盆を迎えるというのは、大変難しいことでした。強引に続けようとしたら、もしかしたら重陽の節句のように文化性が薄れるという現象も起こりえたかもしれません。
 だからといって、旧暦の7月15日にあたる新暦の8月下旬あら9月上旬ころでは、日付が全くずれてしまいます。お盆は「7月15日」という日付に意味があるので、こちらの日程は問題がありました。そこで苦肉の策として7月15日から単純に1ヶ月後を「月遅れ盆」として行う地方が多くなったというわけです。但し、東京を中心とする大都市や、農繁期に重ならない東北地方などではそのまま7月15日に行っています。7月15日を「東京盆」と呼んだりするのは、そこに理由があるのです。

【旧暦での年中行事の時期の新暦対照表】

旧暦    新暦
正月
人日
上巳
春の彼岸
端午
七夕
お盆
重陽
秋の彼岸
正月1日
正月7日
3月3日
春分
5月5日
7月7日
7月15日
9月9日
秋分
2月中旬ー下旬
2月下旬
4月中旬ー下旬
春分
6月下旬
8月中旬頃(お盆の少し前)
8月下旬ー9月上旬
10月中旬頃
秋分

(参考文献『暮らしの中の花(花の民族誌)』農文協)  

2010年 大田市場花き部仲卸協同組合 青年部  

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